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2023/04/09

「革命後を飾る」ウィリアム・モリスの哲学

19世紀イギリスに「革命が起こってしまったらその後どうしよう」と考えた人がいた。ウィリアム・モリスだ。「わたしたちはパンだけでなく、バラも求めよう。生きることはバラで飾られねばならない」

こんにちは。第三の眼代々木店、西洋占星術師・タロティストの藤井まほです。

 

冒頭の文章は、哲学者の國分功一郎さんの『暇と退屈の倫理学 人間らしい生活とは何か?』(2011年朝日出版社刊)のカバーに刷られていたもの。初めてこの本を手にしたとき、わたしはこの「生きることはバラで飾られねばならない」というフレーズにやられました。

(ちなみに本文を読めばこの文章はデザイナーであり社会活動家であるモリス自身が書いたのではなく、著者によるモリスの思想の解釈だとわかります)。

 

西洋占星術で革命といえば、天王星です。そして現代占星術では天王星が支配する水瓶座も深く関わっています。
天王星と革命が紐づけられているのは、ちょうどフランスで市民革命が起こった頃に天王星が発見されたから。そんなわけで天王星には「改革」「革新」「急激な変化」という象意も与えられているのです。

 

 

いまとは違う理想の世界を作り出そうという革命

 

みなさんは「革命」にどんなイメージを持っていらっしゃますか。
急進的な動き、破壊的、暴力的なイメージもありますよね。でもその源には、現状をなんとかして「今よりよくしよう」という意志や理想があると思うのです。
それは水瓶というサインの性質とも響き合いますね。

 

何か理想を抱いて現状を刷新しようとする動きを革命とするなら、ウィリアム・モリスはさらにその先の「革命後」を見据えていた人だというのが國分さんの指摘です。

革命を志す人びとの大部分にとって「革命後」なんて、ある意味抽象的な理想形なのではないでしょうか。
でも革命の先を視野に入れ、具体的にイメージしたところにモリスの特徴がある。何しろ、革命後の「生活」に「花を飾ろう」というのですから。めちゃくちゃ具体的です。

 

モリスといえば、アーツ・アンド・クラフツ運動を始めたことでも知られています。自分のデザインした作品で本当に「生活を飾る」ことを実践していたわけです。

 

出生図から読むモリスの志向と思想

モリスは1834年3月24日、英国ウォルサムストーに生まれました。
出生図はこちら(Keplerで出しています。専門的なことになりますが、ご参考までにAstrodienstのサイトによるとこの出生時間の信頼性はグレードC)。

牡羊座太陽金星と乙女座月。緻密な感受性を自分の美意識や創造性を通じて世に出していったと読めますね。
美しく、繊細な文様、パターンを生み出していった源泉をこのあたりに感じます。

 

一方、思想家モリスの出生図として注目すべきは水瓶座の火星と天王星のコンジャンクション(合)でしょう。
天王星がホームである水瓶座にあるだけでもパワフルなのですが、火星という行動を起こしていくエネルギーと混ざり合うことで、変革や革新、革命が強く意識された出生図だといえるのではないでしょうか。何か爆発的な勢いも感じられます。

 

(余談:水瓶座初期度数には海王星もありますが、モリス出生時には理論的に存在が確認されていたもののまだ「発見」されていなかったので読みません。もしもすでに発見されていたとすると、牡羊座の太陽とセクスタイルという具体的な形として現れやすいアスペクトをとります。海王星は集合無意識と関わりの深い天体。それがまだ公には発見されていなかったそれが、未発見ながらも、モリスの太陽=人生を動かしていく力を通じて具体的な形として表現されやすかった、と読むと、大変興味深いです)

 

 

あなたの「好き」は何ですか?と哲学は問う

 

「哲学」というと難しそうな気もしますが、扱われているのは非常に身近な問題だったりします。
たとえば冒頭のようにウィリアム・モリスを紹介した『暇と退屈の倫理学』は、資本主義によって余暇(=暇ですね)を手にしたわたしたちには暇を持て余して「退屈」してしまう性質があり、結果としてエンタメ産業などが提供するわかりやすい「好きなことや楽しみ」でその暇を埋めたつもりが逆に利用されてしまう実態から説き起こされています。

冒頭の文章は、その序章「『好きなこと』とは何か?」の一部をキャッチコピー的にわかりやすく書き換えたものでした。

好きなこととは何か? 楽しいことって何か? わたしが「課金しているこの楽しみ」は、本当にわたしが「好きなこと」なの?
誰もが突き当たる疑問とまでは言いませんが、インターネットが張り巡らされた社会を生きる多くの人が心のどこかで「自分が好きなことが何かわからない」と感じているのではないでしょうか。

 

『暇と退屈の倫理学』は、さまざまな哲学者、思想家の考え方を参照しながら、そのテーマを考察した本です。
そのとっかかりとして登場するのが、「革命が到来して、自由と暇を得たとき、大切なのはその生活をどうやって飾るかだ」と考えたウィリアム・モリスだったのです。

 

身近なところでモリスデザインを発見!

ところでウィリアム・モリスといえば、最近100円均一ショップの「セリア」でさまざまなモリスデザインの100均プロダクトが販売されているのをご存じでしょうか。
これが、モリスのデザインだけあって100均とは思えないほど美しいんですよね。おそらくプロダクトをデザインしたセリアのチームもかなり力を入れたのではないかと想像します。
たとえばこんな蓋付きの箱とか。

残念ながら、まだ革命は起こっていなくて、わたしたちは自由も暇も手にしていないのですが。
かわいらしいプリントの小さな紙箱を手に、革命後の暮らしをどんなふうに飾ろうかと考えてみてもいいのではないかと思うのです。

 

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